蔡英文総統は28日、総統府で「日本の安全保障を考える議員の会」の訪問団一行の表敬訪問を受けた。一行は石破茂衆議院議員(自民党)、浜田靖一衆議院議員(自民党)、長島昭久衆議院議員(自民党)、清水貴之参議院議員(日本維新の会)の4人。蔡総統は、日本政府が台湾海峡の平和と安定維持の重要性を繰り返し強調していることに感謝するとともに、「台湾は第一列島線における非常に重要な防衛線上にある。これからも日本を含めた民主国家との連携を深め、インド太平洋地域の平和と安定を共に守っていきたい」と伝えた。
蔡総統は冒頭で、今月上旬に銃撃を受けた亡くなった安倍元首相について言及した。蔡総統は、台湾と日本の厚い友情の構築のために安倍元首相が果たした役割は大きいとし、安倍元首相の逝去を惜しんだ。また、多くの台湾人が安倍元首相の逝去に深い哀悼の意を示し、安倍元首相のことを「台湾にとって永遠の良き友人」であると感じていると伝えた。
蔡総統は、今年3月に安倍元首相とオンライン対談を行った際、安倍元首相が「台湾有事はすなわち日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と改めて語ったことを振り返り、この発言は地域の安全保障にとって重要な意義を持つだけでなく、台湾問題への強い関心を示すものだったと述べた。そして、今回台湾を訪問した日本の国会議員についても、同じように日本と世界の民主主義諸国の安全保障問題を重視していること、それゆえ2019年に超党派の国会議員による勉強会「日本の安全保障を考える議員の会」を立ち上げたのだろうと述べた。
蔡総統はまた、「台湾は国際社会の重要な一員だ。我々は、台湾を守ることは単に主権を守るにとどまらないことを知っている。この地域の戦略と安全にとっても、台湾は第一列島線で非常に重要な防衛線上にあるからだ。我々は日本を含めたその他の民主国家との連携を深め、インド太平洋地域の平和と安定を共に守っていきたいと考えている」と語った。
これに対して石破茂議員が一行を代表し、蔡英文総統に謝意を伝えた。また、「安倍元首相に対する銃撃事件によって日本の民主主義が揺らぐことはなく、言論が暴力に屈することも日本においてはない」と語気を強めた。
石破議員はさらに、安倍元首相はアジア太平洋地域において日本がしかるべき責任を果たすべきだと考えており、それは法的、能力的、経済的にもそうであり、精神論だけではなく具体的に行動すべきだという思いは自分と一致していたと指摘。安倍元首相はその思いを遂げることなく亡くなったが、「自分はその思いを継いでいきたいと考えている」と述べた。
石破議員はさらに、ウクライナ情勢をめぐって蔡英文総統が「自分の国でできることは自分でしなければならない。自分の国でできることをしない国を、どの国が助けてくれると思うか」と国民に向けて訴えたことに大変感銘を受けたとして、これは日米同盟も同じだと述べた。
石破議員は続けて、「この地域で有事が発生することを避けるには、備えをしなければならない。どういう事態を想定し、どのような条約や法律に基づき、どのような部隊を運用するか、それぞれ共通の理解をもたなければ抑止力にはらない。(日本と台湾は)シンパシーを共有するあまり、そういう具体的な詰めがまだ不十分ではなかっただろうか」として、「日本が台湾との連携を強めるために、具体的に何をすれば良いかを一つ一つ解決していく。そのためのきっかけを作ることが今回の訪台の目的である」と述べた。